今井むつみ『学びとは何かーー〈探求人〉になるために』岩波新書、2016年
第4章 学びを極める
「熟達するということはその分野の知識のシステムをつくりあげていくことだ」(P96)。
著者は初心者と熟達者の違いをみながら、熟達者の持つ認知的な特徴について述べていく。熟達者の臨機応変を金春安明氏に聞いた話も載せている。
第5章 熟達による脳の変化
「何も考えずに体が動いてできる素早く正確なパフォーマンス、的確な予測、すぐれた直感、識別力、審美眼。これらの認知機能は脳のどのような変化によってもたらされるの」(P120)かが述べられる。脳の皮質の機能などは覚えきれないが、脳は情報処理を通じて変化することがわかればよい。
「模倣による学習が脳の中でどのように行われているのかを理解すること」(P134)が重要なことだと著者はいう。
第6章「生きた知識」を生む知識観
「知識とは何か」が再び問われる。
「知識観、つまり知識についての認識(知識についてのスキーマ)のことを「エピステモロジー」という」(P145)。
著者は「知識=事実」というエピステモロジーをトルコの伝統料理であるドネルケバブ・モデルと呼んでいるのが面白い。
「知識はきれいに切り取ることができる断片である「客観的事実」として存在し、その断片を人から教えてもらう。「知識=事実」のエピステモロジーでの知識モデルは、「客観的な事実」である知識片をぺたぺた表面に貼り付けていって、ひたすら大きくしていくイメージを喚起させる。そこで私はこれを「知識のドネルケバブ・モデル」と呼んでいる」(P147)。
何ともビジュアルなイメージではある。しかし、ドネルケバブの食べ方が肉片をナイフで削るところからそう思うかもしれないが、薄く切った肉片を積み重ねて、形を整えて作るのであり、ぺたぺた表面に貼り付けて大きくするわけではない。ドネルケバブの形からくる思い込みからの命名ではないのか。
第7章 超一流の達人になる
だんだんと天才を論じるようになる。熟達者の共通した特徴を第6章で述べたので、この章では熟達者への道筋に注目する。超一流の達人になるための必要条件だ。
終章 探求人を育てる
子供が達人になるためのシンプルな鉄則
探求エピステモロジーを持こと
親も探求人であること
子供の学習の考察は奥が深い。
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