『丁寧に読む古典』(2008)

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小松英雄『丁寧に読む古典』笠間書院、2008年

高野切で古今集を読んでいくと、仮名文字がテクストと異なるとしかいいようのないのが出てきて困ったことがあった。どうにも読めないのである。今回、小松英雄氏の古今集の解読を読んで納得することができた。欠字ではなく掛字といったのは石川九楊氏だが、墨の濃淡や字の配置に書家による歌のすぐれた解釈が表れているのだった。

百人一首の紀貫之の歌を取り上げた丁寧な解説を読むと、他の歌も本当には読めていないのだと思う。まして、古今集が読めていないのは万葉集重視の明治以降の伝統もあるが、筆の文化を失ったことも大きいのではないか。記帳するときくらいしか筆を持たなくなってしまい、歌を筆で書くことは絶えてないのだから。

仮名を読む訓練を続けていきたいと思う。古文を読むためではなく「古典」を読むために。

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