今野真二『辞書からみた日本語の歴史』(ちくま プリマー新書、2014年)
文章を書くときに自分の使う用語集があると便利だと思う。
「信条」という言葉を使う場合に、「自分の信条」とは何かと自問して書き留めておく。
「美」について、自分は工業製品の硬質な感じに「美」を見るのか、民藝の素朴感に「美」を見出すのか、具体的な作品にまで降りて記述する。すると曖昧なままでは文章にならないことに気付く。
普段の積み重ねで自分というものの像が見えてくるので、いきなり書こうとしても書けないのは当然のことだろう。「国」とは何か、「歴史」とは何かと常に考え続けることが必要だ。
辞書はまずプライベートなものとして利用されたという。今野真二氏によると「源順(みなもとのしたがう)が醍醐天皇第四皇女勤子内親王の命によって、承平四(934)年あるいは承平五年の頃に『和名類聚抄(わみょうるいじゅ(う)しゅう)』という辞書を撰進した」という。なお、振り仮名は筆者が追加した。辞書が内親王の読書のために作られたのである。「作り手」と「使い手」がはっきりしている辞書の古い例である。
自分の用語集とは「作り手」と「使い手」が一緒の辞書ということができよう。
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