『記号創発ロボティクス』を読む

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谷口忠大著『記号創発ロボティクス』(講談社選書メチエ、2014)がめちゃ面白い。決定論的な「論理」を用いて議論されてきた哲学的問題に対する確率論的な切り返しを読んでスッキリした。

哲学者の廣松渉は、「論理的な思考実験によって経験に基づく概念形成の不可能を指摘した」。

例えば、犬という概念を形成しょうと思えば、犬の概念を支える事例を集める必要がある。ポチやジョンという犬を集めてくる段階で「犬」という概念を使ってしまっているのではないか。という指摘である。

この決定論的ロジックの胡散臭さは分かるのだか、みなさんは反駁できるだろうか。

著者は、ロボットでクラスタリングの実験を行い、人間と同じカテゴリー区分を実証した例を報告している。

私が面白いと思ったのは、子供が言語を獲得する仕組みをロボットを使って自律的に行った実験の報告だ。

これらの話の前に、ユクスキュルの環世界の説明をしょう。人間は主観的世界に生きている。客観的世界には自らの感覚器で知覚するか、運動器で作用することで関わることができるにすぎない。人間は知覚世界と作用世界からできている環世界にいる。自分の感覚を他者に伝えるられないのは、この「認知的な閉じ」があるからである。

ロボットにも「認知的な閉じ」を当てはめ、感覚器を使い自律的に学習させてみる。人間が言語を獲得する仕組みの仮説検証に繋がる話だ。人間の知能の分析的アプローチではなく、ロボットを使って機能を推測するのである。

本書は人間の知能にせまる構成論的アプローチの研究事例の紹介が大半であり、構成論的アプローチは第6章にまとめられている。

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