本にすることのプロセス(その4)

断片記憶

一行目から書けなくなる

店の説明を書こうと思って、Google Mapを見ると「先斗町 ますだ」でおばんざい料理店とあった。Appleのマップも「先斗町 ますだ」でおばんざい料理とある。バッキー井上氏の「京都 店特選」では居酒屋「ますだ」、先斗町の「ますだ」であった。太田和彦氏の『ひとり飲む、京都』(マガジンハウス、2011年)も先斗町の「ますだ」で居酒屋と書いていた。

そうなると、手が止まる(昔なら筆が止まるといった)。古い看板は「酒房ますだ」である。新しいプレートは「先斗町 ますだ」となっている。

太田和彦氏の『居酒屋百名山』(新潮社、2010年)では国分綾子著『京の女将たち』(昭和五五年/柴田書店より)として店名を「ますだ」にして開店した(201頁)とある。孫引きだが、これを信じれば「ますだ」でよいことになる。

「先斗町の「ますだ」は、京都府京都市中京区先斗町四条上ル下樵木町二〇二にあるおばんざい料理店である。」としてみた。

おばんざい料理店というのも気になてくる。実際に食べてきたのは、突き出しのてっぱい、明石の鯛や蛸の刺身、鮎の塩焼、鱧おとし、鯖のきずしなどのお任せに、追加で大皿から選んだ酒のあてである東寺湯葉や鰊茄子などであるから、おばんざい料理というのも実態を伝えられていない。居酒屋で済ます先達を見習うべきであろうか。

こうやって事実関係の確認作業をしたり、個人情報の扱いを考えていると、書くというより削るとか書かないという作業をしていくことになる。何のために本にするのかという目的が明確でなかったことに思い至るのである。

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