『習得への情熱 ーチェスから武術へー』(2015)

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ジョッシュ・ウェイツキン、吉田俊太郎訳『習得への情熱 ーチェスから武術へー』みすず書房、2015年、2013年第18刷
書誌情報
THE ART OF LEARNING An Inner Journey to Optimal Performance by Josh Waitzkin,Free Press,2007
チェスから太極拳推手、そしてブラジリアン柔術を学んだ著者の学ぶ技術に興味を持って購入した。しかし、チェスの戦術書ではないし、武術のノウハウ本でもない。著者の回想録の形をとっている。3部からなる。ことでは1部 基礎を取り上げる。
チェスでは父親の書いた『ボビー・フィッシャーを探して』のモデルであり、周囲の期待のプレッシャーが重い少年であった。それは、将棋の7冠を達成した藤井聡太新名人にかかる重圧を想像してみれば想像にかたくない。
第8章に野生の馬をてなづける二つの方法が紹介されていた。一つは「ショック・アンド・オウ(ショックと畏敬)」という馬を縛りつけて怯えさせてから服従させる方法である。これを読んだ時はナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』を扱った番組を見ていたので、すぐに想像がついた。もう一つはホース・ウイスパラーが用いる方法である。洗脳するのではなく信頼の絆を築きあげていく方法である。
著者は自分のチェスのコーチの考え方を消化できずにチェスへの情熱を失っていく。KARPOVではなくKASPAROVのスタイルを好むという著者はKARPOV系を体質的に受け入れ難いのであろう。彼の棋譜を並べたことはないので気風がどういうものかわからないが、攻撃的で泥試合を好む米長永世棋聖のようなタイプと勝手に想像してみている。
チェスの話を読んで著者が好むであろうFISCHERを扱ったKASPAROVの本を読みたくなった。
GARRY KASPAROV ON FISCHER : MY GREAT PREDECESSORS PART Ⅳ
チェス盤を横に置いて本を読みながら、日がな一日を過ごしてみたいものである。

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