『真夜中の檻』(2000)

読書時間

平井呈一『真夜中の檻』創元推理文庫、2000

Le Petit Parisienのオーナーさんが、読むようにと貸してくれた本である。

平井呈一といっても、たいがいの人は知らないと思う。英文学の翻訳者であり、近代海外怪奇小説の紹介者であった。永井荷風に師事したという意味で、文人の系譜に入るかもしれない。序文に荒俣宏氏が平井呈一に師事したことを書いている。三度も破門されたようだが。その平井呈一が海外怪奇ものが好きなことは収録されたエッセイでも分かるが、平井呈一自身が書いた二篇の怪奇小説がこの本の中心である。課題は「真夜中の檻」のほうである。

戦後4年目に高校の夏休みを利用して旧家の古文書類を調査しに出かけた教師が書き残した手記という体裁をとっている。舞台は新潟でありるが、駅はOとぼかしている。雪国の夏の自然の描写は、川端康成の『雪国』の冬の描写とは異なって新鮮に感じた。平井呈一は東京生まれであるから、雪国を知らないであろうが、旅人の眼で雪国の夏を味わうことはあったのだろう。

怪奇小説なので中身を書くわけにはいかないので、この辺りで記憶を留めておくことにする。

コメント

タイトルとURLをコピーしました