『京都の山と川ーー「山紫水明」が伝える千年の都』(2022)

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鈴木康久、肉戸裕行『京都の山と川ーー「山紫水明」が伝える千年の都』中公新書、2022年
ネットを見ればある程度情報が得られる。ただし、整理されていないので、バラツキが大きいため全体を俯瞰するには適していない。本書は、京都が山と川によって形作られたことを千年にわたって辿っている。
京都の三山は東山、北山、西山を紹介し、川は鴨川、桂川、宇治川、琵琶湖疏水、そして洛中の川が、堀川、高瀬川、西高瀬川、白河や明神川までも紹介されていた。
山の価値を、四つのカテゴリーで説明していた。林産物の経済的価値、空間的価値としての土地利用、宗教的価値、心理的(美的)価値ともいえる美しい山々が京都独特の景観であるという。
河川の価値を四つのカテゴリーで説明していた。水運、水力、生産(灌漑・漁業)の経済的価値、河川の空間的価値、宗教的価値、河川と山の融合から生まれる美しい景観、すなわち「心理的(美的)価値」としての水辺であるという。
山河の新たな価値として「身体的(健康)価値」が付け加えられた。
新幹線が東山トンネルを抜けて京都駅に近づくと眼は愛宕山を探しているし、鴨川の流れが気になる。京都の山は近年まで薪や落葉取りによりオーバーユースされたため裸山だったから、アカマツが優勢で松茸が取れた。薪や柴が燃料に使われなくなって、山はシイやカシなどの常緑樹が主体の山となった。河川にしても人の手が入って昔から比べれば随分と流れが変わってしまった。建物も人々の服装も変わってきた。だから、人々が見て来た数だけ京都がある。

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