休みをだらだらと過ごして、『高野切第一』(二玄社、1993年、2014年2版第9刷)をめくった。
春歌上の二首目が記憶では読めない。
はるのたちけるひよめる
きのつらゆき
そてひちてむすひしみつのこほれる
をはるのたけふのかせやとくらむ
佐伯梅友校注『古今和歌集』(ワイド版岩波文庫、1991年、2007年第6刷)で比べてみる。
春たちける日よめる
紀貫之
袖ひちてむすびし水のこほれるを 春立つけふの風やとくらん
覚えていたのは後者の方で、紀貫之の有名な歌のテクストの違いに気づく。『高野切第一種』は断簡であるけれども、この他にも記憶では読めない歌がでてきた。書写しの明らかな誤りもあり、先人がテクストを確立するための苦労が偲ばれたし、その過程を辿ってみたいとも思った。
日文研のデータベースは後者だった。
はるたちける日よめる
紀貫之
袖ひちてむすひし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ
文化遺産オンラインの定家の自筆本も後者。
はるたちける日よめる
紀貫之
袖ひちてむすひし水のこほれるを春立けふの風やとくらむ
定家の読みしか年代の確実なものは残っていないことを思い出した。
高野切第一は古谷稔氏の解説では11世紀半ば頃の筆と推定されている(P59)というから、藤原定家の前と考えられる。しかし、「はるのたけふ」では意味が通らない。「はるたつけふ」が歌として通じるのだと思う。
日文研のデータベース 古今集
和歌データベース
文化遺産オンライン 古今和歌集(藤原定家筆)
古今和歌集〈藤原定家筆/〉 文化遺産オンライン
藤原定家(一一六二~一二四一)が嘉禄二年(一二二六)に書写した『古今和歌集』(二十巻)で、中世以降の『古今集』研究に多大の影響を与えたいわゆる「嘉禄本古今集」の原本である.帖の末尾に嘉禄二年、定家六十五歳の時に書写した旨の奥書があり、そ.....
Wikisource 高野切第一種
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