写本ということ

断片記憶

本が貴重だった時代、写本や版本を筆で書き写しながら読むことが最高の読み方と考えられていた。隆慶一郎が『一夢庵風流記』(読売新聞社、1989年)の中で直江兼続をそういう本の読み方をした人物として描いていた。

今でもそういう人がいて、右手を遣うと速すぎるので左手で書き写しながら読むという。思想史家の本を読むにはそれくらいが本を読む速度としてよいのかもしれない。石川九楊先生が臨書をすることで空海の「風信帖」を読むように。

人生に残された時間が少ないからといって飛ばして読んでも仕方ない。そんな本は読むに値しない。書くことによって一字一句を疎かにせずに理解しようとしているのだから。

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