前田真三『吉野春秋』パイオニアLCD、1990年、29分、音楽は都留教博
タイトルから南北朝時代ものと考えるのは昨今の室町ブームに毒されている証拠である。これは、写真家の前田真三のビデオである。
1.花の山・里の春
2.山桜有情
3.爛漫花模様
4.芳春吉野山
5.散りゆく季節
6.もみじ光耀
金峯山寺蔵王堂や如意輪寺が桜の山に浮かぶ。上千本、中千本、下千本の山桜は義経千本桜の狂言で有名であるが、いざ見ようとすると、吉野山は山奥と言って良い。近鉄で行くと大阪阿部野橋から吉野まで1時間16分(特急)、京都からは、橿原神宮前で乗換えて1時間41分(特急)。そこから、ロープウェイかバスかタクシーで中千本まで上がるかする。当然、桜の時期は大混みで、乗り物は行列待ちである。
ビデオを観た印象は、春は一色ではないということだった。全山桜の花で覆われるという印象があるが、言葉の綾というものだ。私が行った時は、マイクロバスに乗り換えて奥千本まで行った。曇っていたし、桜は満開とは言えなかったが、桜の山を歩く気分は味わえた。
山桜を延々と写した後、アングルを変えて、菜の花、白木蓮、辛夷、梅、タンポポ、スミレ、シュンラン、ヤマツツジ、オオイヌノフグリ、レンゲ、サンシュユ、ヤブツバキ、桃と春爛漫の景色である。
葉桜になると、古今和歌集の春の世界か。見る人の観察眼や知識により受け止め方は様々だろう。これに合わせる歌が出てこない。
花吹雪
秋は紅葉の季節だ。
秋は時間も短く物足りないのは構成をみても明らかだ。矢野健夫氏がモーターパラグライダーで撮影した秋の吉野山の桜の紅葉が記憶にあるので(ニュースステーション)、いつかと思っているが、なかなか難しい。このビデオに桜の紅葉は写ってなかった。前田真三はカエデの紅葉しか写さない、イチョウの黄葉が交じるくらいだ。桜の紅葉は難しい被写体である。山桜の紅葉が写せなかった以上、このビデオは『吉野春爛漫』の編集でよかったように思う。
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