「知的生活」とは何か

断片記憶

「知的生活」とは

故渡部昇一氏のいう「知的生活」というのは考えてみればよく分からない言葉だ。P.G.ハマトンのThe Intellectual Lifeからきていると思われる。「方法」はhow-toではなくwayであろう。

渡部昇一は「知的生活」の定義を『知的生活の方法』(1976年)では書いていない。倉下忠憲氏は『続 知的生活の方法』(1979年)の中に「知的」の意味を見つけた。

「ドグマにとらわれず、自分で納得しなければすまない心的態度」

「知的生活とは考える生活のこと、あるいは考えることが日常に織り込まれている生活」だと倉下忠憲氏はいう。要は自分の頭で考えるということなのだろう。学生生活を終えて職業生活に入り、この先どのように学んでいくのかということを渡部氏の経験から書いたのが『知的生活の方法』といえる。

「知的生活」の意義

日本の高度成長期は庶民に生活の余裕をもたらした。団地サイズとか恐ろしく画一的な時代でもあったが、本は借りて読むことから買って読むことになってきた。「知的生活」とは一言で言えば、本を買って読むときに鵜呑みをしないことである。本を読んで楽しかったで終わるのは「知的生活」ではない。忙しいサラリーマンが興味を抱いたテーマについて調査し深く理解することの喜びを示した点で画期的だった。渡部昇一は英文法史が専門であるが、ドイツ参謀本部の歴史を調べて新書を書いている。知的生活の成果を見せたといえる。本の読み方に関して、渡部昇一はノートをとることよりは、本に直接書き込みすることを提案していた。

「知的生活」の現在

そして40年経ってインターネットで誰もが学べる時代となった。インターネットには真偽不確かな情報が流れている。この情報を取捨選択をしているのが現在の「知的生活」かもしれない。デジタル技術は本を作って販売するというより、サービスとして提供する方向に向かっている。Amazonの定額サービスは、本を読みたい時に読むことができる。街の本屋で本を買っていたときは、専門書など限られた冊数しか出回らないため、とりあえず買っておくという買い方をしたものだ。今回、『知的生活の方法』について思っていることを書こうとしたのだが、本が見つからない。kindleで読んでkindleに書き込みする時代となったようだ。

注)

倉下忠憲『知的生産とその技術 classic 10選』kindle、2016年

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