網野善彦『蒙古襲来』小学館文庫、2001年、2005年第2刷
2.『蒙古襲来』の時代
網野善彦の『蒙古襲来』は分厚い。北方謙三の解説を入れて614ページである。
網野善彦は『蒙古襲来』で飛礫(つぶて)・博奕(とばく)・道祖神(さえのかみ)を最初に取り上げて、支配者が恐れた鎌倉時代後期の民衆の持つ底知れぬエネルギーを示した。そして本書の視角で「江戸時代の庶民のイメージでおしはかろうとすることは、大きな誤りをおかすことになろう。」と警告している。
もちろん、本書は小学館『日本の歴史』全32巻の中の第10巻として、1974年9月に刊行された『蒙古襲来』を1992年に再刊したものを2001年に文庫にしたものであり、「蒙古襲来という前近代における最大にして、ほとんど唯一の本格的な外寇が、日本の政治・社会の歩みにいかなる影をおとしたかを、鎌倉時代後期の歴史をとおして明らかにすることにある」。
網野善彦は鎌倉時代後期の「日本人の野生」ともいうべきエネルギーを見いだした。親鸞が他力本願を説いた時代の民衆の状況を理解しなければ、親鸞を読み誤るのではないかと思った。
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