『行きつけの店』(1999)

断片記憶

「行きつけ」とは山口瞳が食事や旅行の際にみせるスタイルである。何かの縁で入った店が気にいると何度も通うことになり、「なじむ」ことを好む態度である。食事や旅行の都度、違う店や旅館を選ぶことを志向するのとはおよそかけ離れた態度である。人には馴染の店とか「行きつけ」にしている店があるものである。しかし、何もかも「行きつけ」にしなければ気が済まないというのは少し度がすぎるのではないか。ほどほどがよいのである。

『行きつけの店』は他の選択肢をとらないこと、「行きつけの客」になることで、主客一体となって「行きつけ」を味あわせてくれる本である。山口瞳が描く人間模様を楽しむ本である。「亀末廣の竹裡を食べないと秋がこない」とか口から出るようになると、立派な「行きつけの客」である。

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