餅を供えるの続き『オコナイ』(2008)

シガモノ

中島誠一監修、上田洋平、原田信男『オコナイ 湖国・祭りのかたち』INAXo、2008年

餅を供える話で『オコナイ』を出したので少し補足しておきたい。『オコナイ』を読んでいくと、御鏡と呼ばれる鏡餅をつき、奉納する話が出てくる。川道神社の巨大な鏡餅は本の表紙にもなっている。

湖国の1月から3月にかけて、村内の豊作と安全を祈願する祭りをオコナイとよぶ。鏡餅の形や飾り付けも千差万別である。

川道神社のオコナイは2月の最終の土日に行われる。若衆が一俵の粳米で鏡餅をつくり、当屋宅へ運び宵宮を待つ。夜半に川道神社へ90kgの鏡餅を神輿で運ぶのである。7組の「村」から鏡餅が献鏡され、神饌が拝殿に供されて儀式が始まる。

老杉神社は豪華な神饌だ。春日神社は板御幣と逆さ栗が変わっている。日吉大社は船から散供(さんぐ)する粟津の御供が紹介された。どれもこれも不思議な祭りに映る。しかし、近年は行事の省略や廃止を検討する村も出てきたというのがオコナイのおかれた現実のようである。

中島誠一氏は変貌して行く近江のオコナイについて、「今に残る多くのオコナイ関係古文書は、華美に陥りがちな行事を諌めてきた記録の連続である」とした上で、「オコナイが人々の暮らしに与えた”かたち”の効果は、もっと高く評価されてもよい。立ち居振る舞いや座の執り成しなど、まさに日本人が失った伝統がそこにある。オコナイの真の意味を見定め再評価し、どのようなかたちで継続していくべきか、今こそ私たちが真摯に問うべき時期である」と結んでいる。

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