大船軒のしらす弁当(1,080円)にする。いつもの弁当でなく、なぜか春らしいものにした。
昨夜はフランチェスカ・トリヴェッラート、玉木俊明訳『世界を作った貿易商人 地中海経済と交易ディアスポラ』(ちくま学芸文庫、2022年)の第1章を読んでみた。玉木俊明氏の解説を読んでも「ディアスポラ」のことは何も説明していない。一般的に使われる用語のようだ。ギリシャ人が地中海世界に広がっていたことはよく知られている(ディアスポラはギリシャ語でδιασπορά撒き散らされたものという意味らしい)。ギリシャ人のディアスポラという。この論文集では、交易ディアスポラのユダヤ人(特にイベリア系ユダヤ人のセファルディム)とアルメニア人が扱われていた。資本主義の起源を巡っては論争が尽きないようである。
曇りである。
大阪駅で大阪環状線の2番線から京橋駅へ向かい、東西線に乗り換えて大阪城北詰駅の3番出口を上がると、右手は造幣局の桜の通り抜け(要予約)、左手が藤田美術館であった。駅の上に美術館が建っていたのだ。藤田美術館は完全キャッシレスであると説明された。検温してSuicaで支払う。wifiがあるが外では入りにくい。何しろ蔵の中では電波が遮断されるため、wifiを使わないと、展示品の解説が見れないのである。そうはいってもあみじま茶屋のお茶席では現金が用意されているのであった。四角い藤田美術館の設計・施工は大成建設が行い、旧建物の資材を再利用している。
展示室の入口は蔵に使われた資材が出迎えてくれる。中は照明を落としているので暗い。目が慣れるまで歩けないくらいだ。例の修復された青磁鳳凰耳花入は照明の関係で光の透ける感じが見えないのが残念だった。
展示室を出ると、明るい世界が待っていた。多宝塔である。その向こうに広がるのは広大な敷地であった旧藤田邸庭園で、藤田邸跡公園として整備されている。
大阪城北詰駅から、東西線で京橋駅、京阪線に乗り換えて渡辺橋駅で降りる。12番出口が中之島香雪美術館へのアプローチだ。中之島フェスティバルタワー・ウエスト4階にある中之島香雪美術館の展示は「来迎」であった。解説がわかりやすく、この知識がないと来迎阿弥陀図が読み解けないのだ。前にも見たが忘れていた茶室が最後に出迎えてくれた。旧村山家住宅の茶室玄庵を常設展示として再現している。建築家の中村昌生氏が設計・監修し、安井杢工務店が施工した茶室と露地はまさに都会の山居に相応しい。
中之島フェスティバルタワー・ウエストのコンラッドホテルの40階からの眺めは手前の土佐堀川から大川、中景の大阪城、遠景に生駒山地の山々だった。大和野菜と和歌山の魚のランチを箕面ビールで楽しむ。おさるグラスがかわいいのだ。
食事の後は、少し歩いて中之島美術館へ行く。
遠藤克彦建築研究所の設計した四角いフォルムの黒い中之島美術館でモディリアーニ展ではなく、みんなのまち大阪の肖像(1)を観る。第1期では明治、大正、昭和戦前が絵画、写真、ポスター、書籍などよって展観されていた。
渡辺橋から京阪に乗り、天満橋で1番線から3番線に乗り換えて特急で祇園四条へ。
南座で都をどりを観る。3回目は16時開場となっていて、2階の上手の席で踊りを観る。スピーカーの側なので音が気になったが令和になって初の都をどりを堪能した。パンフレットが分厚くなっていると相方が気づく。
歌題は「泰平祈令和花模様(たいへいのいのりれいわはなもよう)」であった。病終息の願いである。
置歌(おきうた)
上賀茂社梅初春(かみがもしゃうめのはつはる)
夏座敷蛍夕(なつざしきほたるのゆうべ)
京遊戯色々(みやこのあそびいろいろ)
那須与一扇的(なすのよいちおうぎのまと)
勝尾寺紅葉揃(かつおうじもみじぞろえ)
宇治浮舟夢一夜(うじのうきふねゆめのひとよ)
御室仁和寺盛桜(おむろにんなじさかりのさくら)
一力さん横の割烹で、楽しく食事をして、縄手通りのバーへ。シャンパンをお代わりして、マスターと話しながらこの空間の記憶を修正したのだった。
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