末木文美士編『死者と霊性ーー近代を問い直す』岩波新書、2021年
本書は末木文美士氏(司会)、中島隆博氏、若松英輔氏、安藤礼二氏、中島岳志氏による座談会の記録である。「霊性革命」は安藤礼二氏の論考で井筒俊彦の思想の起源と帰結が述べられている。
ちょうど「特別けん談 東洋哲学とは何か」(斎藤慶典、安藤礼二、山崎達也、2021年)を読む座談会の案内に斎藤慶典『「東洋」哲学の根本問題』(講談社、2018年)安藤礼二『折口信夫』(講談社、2014年)、安藤礼二「霊性の革命」末木文美士編『死者と霊性』(岩波新書所収、2021年)、安藤礼二『鈴木大拙』(講談社、2018年)の4冊などがこのけん談で取り上げられていたと川島俊之住職がPeatixに写真をあげていたので、安藤礼二氏の「霊性の革命」が手頃と思って手に入れて読むことにした。
「特別けん談」ではあっさりと話していたのが、「霊性の革命」では、突っ込んだ説明がおり、政治性の問題も理解できた。イラン革命を「霊性の革命」とするのは斬新であったが、明治維新を「霊性の革命」となぞられるのはちょっと違和感がある。
イラン革命を(その淵源に特異な哲学、「存在一性論」があった)と見る安藤礼二氏は、「イランの人々が還ろうとしていたのは、預言者ムハンマドが断行した革命、その結果として預言者ムハンマドが地上に産み落とした理想の社会、原初の信仰共同体である」(p.246)という。
「しかし、果たして、そのような革命は、ただイランだけに起こったことだったのであろうか。イランに先んずるかたちで、この極東の列島、日本に生起した明治の維新とは、まさにそのような革命ではなかったのか。古代的で反動的で排他的な側面と、未来的で革新的な側面が渾然一体となった「霊性」の革命ではなかったのか」(同上)。
この点はイランの霊性と日本の霊性をどう考えているのか安藤礼二氏は丁寧に説明する必要があると思う。
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