近代ロンドンの繁栄と混沌(カオス) 駒場博物館 2023年5月13日(土)〜6月25日(日)
ウィリアム・ホーガスはイギリス18世紀を代表する画家・版画家であるが、日本における知名度は低い。ほぼ知られていない。そんな画家・版画家の版画展を観るきっかけは、オンライン連続講座「知の継承(バトン)」2021年度第1回講座「紙の誕生と伝播から見る「記録媒体の世界史」:東洋から西洋へ」を観たことで主催者である東京大学経済学図書館・経済学部資料室からメールが来たからであろう。
東大駒場前駅の階段を降りるとすぐに正門である。正門を入って右手に行くと大きな樹の先に博物館がある。大河内一男、暁男の二代にわたって蒐集したホーガスの版画71点が寄贈されている。オンライン講座で見たホーガスの絵が出迎えてくれる。確かに、教育的な観点から付箋が貼り付けてられていた。ホーガスについつは、Le Petit Parisienのオーナーと位置づけについて話し合ったりした時、風刺とリアリティの捉え方が難しかった気がした。戯画でなはいが、かといって写実主義でもない18世紀の絵画に描かれた人物には猥雑なものを感じるが、リアリティを感じなかった。むしろ、背景であるジョージアン様式の建物は遠近法が効いてリアリティがあった。
記念講演をメモしておく。
大石和欣東京大学大学院総合文化研究科教授の
「都市のリアリズム ー ホーガスと18世紀のロンドン」
三浦篤東京大学大学院総合文化研究科客員教授・駒場博物館館長の「ホーガスとの位置 ー フランスとの関係を中心に」
ここ講演では明治大学名誉教授の森洋子氏が懇切な解説と共に質問するのを聞いていて楽しかった。会場は50人でZOOMは100人が開催記念講演会を聞いたという。
大石和欣教授はホーガスの版画の建築の描写に都市のリアリズムを見ているようだ。森洋子氏から《一日のうちの四つの時〈夜〉》の左下の子供についての言及がないとコメントがされた。貧困の問題はホーガスが取り組んでいた問題である。トマス・コーラムの設立した捨て子養育院にも関わっていることを説明していただけに少し残念だった。
三浦篤駒場博物館館長は、美術史の専門であるから、ホーガスの版画を前後の時代の画家と対比して説明してくれた。三浦篤氏がホーガスの版画《ビール街》1751年と《ジン横町》1751年をピーテル・ブリューゲルの版画《太った台所》1563年と《痩せた台所》1563年と対比して説明したことにについて、森洋子氏がブリューゲルが二つの否定的な価値のものを対比したのに対し、ホーガスの《ビール街》は裕福であり、ジン横町は《貧困》と対照的なものを扱っている。ブリューゲルは寓意であり、ホーガスは風刺である。両者の絵の構図だけを比較するのはいかがなものかという質問をされた。的を射ていると思った。似た構図の絵を持ってきて影響を云々するのは少し安易なやり方だったかもしれない。
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