『古くてあたらしい仕事』(2019)

読書時間

島田潤一郎『古くてあたらしい仕事』新潮社、2019年、2020年第7刷

 

一人出版社の夏葉社の島田潤一郎氏のエッセイである。装丁は南伸坊氏。淡々とした語り口で、生い立ちと夏葉社の創業を書いている。

 

島田潤一郎氏が求人の応募に断られた続けていた時に、仕事というものに気がついたと書いていた。

 

「世の中では、労働し、自分の能力と時間を会社に捧げることによって、対価をもらうことを、仕事というのだと思う」(P34)。

 

「その意味でいうと、ぼくはお金と関係のある仕事を、いつまでたっても見つけられなかった。けれど、お金が発生しない仕事であれば、いくらでも見つけられるような気がした」(P34)。

 

東京で職が見つからなくて、大好きな叔父と叔母のいる高知で職探しをしたが見つからなかった。

 

「そのときには、ぼくはもう自分の仕事を見つけていた。それは、叔父と叔母の心を支えることだった」(P43)。

 

息子を亡くした叔父と叔母に一編の詩を本にしてプレゼントすることを思い立った。夏葉社はその流れで生まれた。

 

本の編集者でもない。全てプロにお願いする。本の復刊を仕事にしたのは、小さな出版社が大きな出版社にはできないことでそこに居場所を見つけたのだった。

 

夏葉社の2冊目の本は関口良雄の『昔日の客』(2010年)だった。私も、古書善行堂で買い求めた。帯に名著復刊とあり、2014年には第7刷となっていた。この本は布張りで小ぶりであるが良い本である。引っ張り出したついでに読むことにする。

 

注)詩 ヘンリー・スコット・ホランド、絵 高橋和枝 装丁 櫻井久『さよならのあとで』(2012年)は夏葉社の3冊目の本で、叔父と叔母のためにつくったという。

 

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