辻静雄『バリの居酒屋(びすとろ)』柴田書院、1971年
辻静雄がパリのレストランガイドに載っているメニューを取りあげて、日本人が知っているフランス料理は氷山の一角のような気がしてくると書いています。
そして、ビストロについて、辞書的な定義をあげたあとで、言葉の起源に諸説あるとしながらも、「パリの安くておいしい店、いわゆる一ぜん飯屋というか大衆食堂、それも日本式の大きい店じゃなくて、みんな三十人もはいったらいっぱいになっちゃうという店が多いのですけれども、そういう店のことを、フランスではビストロと呼びます」(P20)と書いています。
う〜ん。だいぶイメージが異なる感じがします。レストランとの対比でビストロを理解するのは違うといっているようです。
31あるビストロ案内を見ても予約が必要な店が出てきます。日本の居酒屋ではありませんね。
最後に、口述筆記は少し悲しいトーンになります。
「もっとも、こうしたビストロも年とともに生れては消え、ただ私たちの記憶のうちにしか存在しない。そこで楽しまれた料理も思い出の中にしか残らない。時おり、なつかしく、回願する人の気持ちの中にしか浮かびあがってこない。すべては忘れ去られてしまう。むなしいものです」(P206)。
注)ここで私たちとは、パリのビストロを懐かしむ装丁の佐野繁次郎画伯やレンガ屋の稲川恵子氏。
それにしても、装丁がなんともパリの雰囲気が出ていて楽しい。太田和彦氏の『居酒屋百名山』(2010年)の連載に先斗町のますだが出ていたのを思い出した。居酒屋(びすとろ)「ますだの記憶」を読み返して、過ぎ去った京都の日々を懐かしんでいます。
コメント