行きつけの旅

四都手帖
新幹線の名古屋駅を出ていくつか川を越えると車窓の景色に鈴鹿の山並みが浮かんできた。普段ならもっとくっきりした輪郭を持っているはずだが、春の黄砂の舞う時期はそうなのかもしれないと思った。
夢うつつ 霞む山並み 春畠
多くの観光客でごった返す京都駅を降りて、京都タワーのある正面口まで歩いてみた。世界は観光のスイッチが入ったようだった。
平安神宮の神苑で薄茶を喫する
地下鉄を使って東山駅で降りて白川沿いに神宮橋へ出る。平安神宮の前に何やら舞台のようなものができていた。近づいて京都よさこいであることがわかった。
神苑の切符売り場に行列が出来ていた。一人では捌ききれないようだった。ようやく二人目が来てくれたおかげで切符を手にして神苑へ入ることができた。600円。
この紅枝垂れ桜はしかし満開であった。今年は進行が速いのであろう。
在釜の案内が出ていた。お茶でも頂こうという気になる良い天気である。茶室の澄心亭(ちょうしんてい)で観桜茶会が開かれていた。誰でも参加できる茶席である。1,000円。外で緋毛氈を敷いた腰掛けで抹茶を楽しんでいる人達を横見に少し待つと、中に案内された。
澄心会の今日の担当は江戸千家の方々だった。神戸から来ていると言う。床の間の花は自宅から持ってきたという。掛軸は淡々斎筆の松老五雲披と説明書があった。老松五雲披(ろうしょうごうんにひらく)というめでたいものだが、松老ではそうは読めない。松老いて五雲を披くと素直に読むことにした。
うつわやあ花音で茶を喫する
白川疏水に沿って仁王門通りを南禅寺に向かって歩く。インクラインを橋で越えたところにうつわやあ花音がある。「青海波を舞うように」江波冨士子・佃真吾  二人展であった。江波冨士子さんのガラスがカラフルすぎて、私の好みではなかったというと笑われた。
梶さんから御菓子司聚洸で青海波にちなんだ干菓子を作ってもらったという話を聞いた。干菓子は作らないのを無理を言ったらしい。200個を作り2つづつ出したので無くなってしまったという。娘さんに出してもらったお茶は虎屋の桜の干菓子であった。
町家で鰻を食す
縄手通りのかね正でお使い物したら、鰻が食べたくなって、千本上立売下ルのうなぎのおおぜきへ車をつかまえて行く。町家で関西風のパリッとした鰻丼を食べることができて満足である。観光客でどこも混んでいると言うと、北野天満宮や平野神社と違いこちらは静かだと笑う。千本通も昔は賑やかだったが、今はそれを知る人も少なくなった。夫婦共に元気そうでなによりである。
西陣を家元の家の方へ歩いてみる。そこここの桜を楽しみながら家元の散歩気分である。烏丸通に出て、地下鉄で京都駅へ向かった。

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