『歴史学はこう考える』(2024)その2

読書時間

松沢裕作『歴史学はこう考える』ちくま新書、2024年

第2章は自身の研究なので、細かいニアンスが伝わってきた。これからは他者の論文を読み取る話になる。

第3章では中央政府の政治家たちの行動に注目するタイプの研究(政治史の一つ)として高橋秀直「征韓論政変の政治過程」(『社会科学討究』41-3、1996年)をとりあげていた。政局を扱った論文は時系列に書かれている。一般に因果関係を証明することは難しいことである。事実を史料から読み出すことは可能であるが、史料から言えることにも制約がある。論文執筆者が目的とすること(述べたいこと)により、史料のどこに注目するかが違ってくる。

副島種臣(「使節団派」)から岩倉具視(「内治派」)宛の書簡から高橋秀直は「征韓派の参議たちが政策の再検討を決定したことを読み取った」(p.141)のであるが、松沢裕作氏は征韓派の参議から、岩倉具視や大久保利通の違いがどう見えていたのかなど、別の歴史叙述も可能となるとしている(p.140)。

論文執筆者の課題設定について、阿部謹也『自分のなかに歴史をよむ』から、卒業論文のテーマ選択にあたり「どんな問題をやるにせよ、それをやらなければ生きてゆけないテーマを探すのですね」というエピソードを紹介している(pp.145-146)。

コメント

タイトルとURLをコピーしました