『中世政治思想講義ーーヨーロッパ文化の原型』(2024)その2

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鷲見誠一『中世政治思想講義 ヨーロッパ文化の原型』ちくま学芸文庫、2024年

フランシスコ教皇が亡くなって、枢機卿による選挙が行われた結果、プレボスト氏が選ばれたレオ14世を名乗ることになった。ローマ・カトリックの教皇の歴史を読もうとしたが、手元には異端の話くらいしかなかった。そこで、本書のタイトル通り、ヨーロッパ中世の政治思想的意義を論ずる本書がローマ教皇をグレゴリウス改革から宗教改革の手前まで論じているのでちょうどよかった。タイトルからローマ教皇の歴史が扱われているとは読み取れないと思う。

ピピンのクーデターでカロリング王朝が成立すると、政治思想的意味を2つ述べている。

「ローマ・カトリックの信仰を受け入れた人々がゲンマン人の中に多数存在するようになり、その人々がローマ教皇の信仰的・道徳的権威を認めるようになってきたことです」(p.43)、「つまり、ゲンマン人の政治権力正当化原理が、ゲンマン神話からローマ教会のキリスト教に転換したわけです」(p.43)。

「政治的紛争の仲裁者、調停者としての権威と資格をローマ教皇が保持していると人々が認めはじめたことは、のちのヨーロッパ政治思想に大きな影響をを与えました」(pp43-44)。

この調子で、グレゴリウス改革の政治思想的意義が叙任権闘争の意義として示された。

「叙任権闘争は、世俗ヒエラルヒー(インペリウム)と聖職者ヒエラルヒー(サケルドティウム)、この両方において共通認識ができたことです。それは共同体の権利を主張するということなのです」(p.110)。

これでは抽象度が高い表現である。

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